バイリンガル教育の問題点

黒川伊保子さんは、ご自身も出産育児を経験され、
脳の働きと関係させて、

言葉や男女差の問題についての本を多数書かれていますが、

この本では、小学生までの年代の言葉の学習に関して

たくさんの示唆に富んだ話題が展開されています。

私は、これまで、一年生で作文に取り組むことは、

年齢的に早すぎるのではと思っていましたが、

保護者の方の協力があれば、

「文字を書く」というハードルを越えられるので、

うちのような形の家庭学習中心の通信教育では、

むしろ、

上手な取り組み方を考えて「早くやるほうが良い」

のだと、考えを改めました。

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個別の話題については、また、取り上げますが、

一番ショッキングであり、一面納得できたのは、

赤ちゃん~3歳までの英語教育のために、

母語の形成が損なわれる

という記事でした。

保護者が赤ちゃんが話す喃語(なんご)を、

そのまま返して話しかけることで

言葉と、外の世界と、情緒が関連付けれれて、

細やかに発達することこそが、母語の獲得ということなのですが、

バイリンガルに育てようとする学習ために、

そうした一番大事な言葉にからんだ情緒の発育

阻害されるというのです。

7歳までの3年間以上、海外にいて、

公的な言葉と、家で話す言葉が一致しないというケースも

問題になるのだそうです。

8歳までがそうした言葉の学習の臨界点なので、

それまでは、

日本語とタイプの違う言葉(例えば英語)の学習はやらないほうが良い

というのが、黒川さんの主張です。

このことに、ピンと来たのが、

基本的な情感を表す言葉に対して、

センスが極端に乏しい子の例です。

別の塾で仕事をしていたとき、

バイリンガルを目指していて、

小学2年生で英検2級の壁を越えたいという生徒さんを

預かったことがあるのですが、

英語力や知性はすぐれているのに

言い知れない感性の欠落を感じるのです。

そのお子さんは、

EQが低い

などという言葉では言い表しがたい

なんとも不自然でぎこちない情感の持ち主でした。

そして、まわりの人に対する

なんとも言えない苛立ちと憎しみを背負っていました。

似たようなお子さんを何人か預かって

単にその家庭特有の育て方の問題なのだろうか

という疑問は以前から抱いていました。

3歳までに、英語のテープやDVDを流し続けて、

日本語の話しかけを控えていると

普通の日本語の会話すら、困難になるのだそうです。

(お医者さんによるリハビリが必要になります。)

英語の学習自体の問題というより

母語がきちんと形成されていない状態での英語学習

が問題なのです。

英語圏の方が、ドイツ語やフランス語を学ぶのとは違って、

日本人が英語という言語構造が違う言葉を並行して学習すると、

基本的な情感の形成を損なってしまうのです。

保護者の方が

赤ちゃんに合わせたコミュニケーションを上手くできていない

ということも同じような問題を発生させているはずです。

10歳までの日本語(=母国語学習)の大切さを

「10歳までに決まる!頭のいい子の育て方」に掲載しましたが

人としての情感ひいては考える力の獲得という意味では

読み聞かせも音読も作文も、そしてすべての会話が

豊かであって、豊かでありすぎるということはありません。

これからも、国語の効果的な学習方法を提案していきたいと思います。

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