主文を見分けるルールをしっかりマスターする

ルール1 形式段落ごとに一つの主文を選ぶ 筆者は読みやすさを考えて、形式段落を作っています。すると、一つの形式段落では一つのことを中心的に述べることになります。

①   さまざまな商品は、「需要と供給」の関係で値段が決まっています。片方に「需要」があると、もう片方に「供給」がある。そこには、「買う人」と「作る人」という役割分担が存在します。
最初の文章では、「商品の値段は、『需要と供給』の関係で決まる」ことが述べられ、後の文章では「需要と供給」について、くわしく説明しているので、前の文が主文となります。 説明的な文章は、形式段落の始めに「○○は、△△である。」という主文があり、そのあとの文章でそれを説明していくのが、基本的な構造です。こうした形で書かれている文章は、比較的読みやすい文章です。   ルール2 内容をまとめている文を選ぶ
②  つまり、一人がすべてを製造するのではなく、人々が分業してさまざまな商品を作り、それを「交換」しています。「需要と供給」は、分業・交換を前提にしているのです。
  この形式段落では、主文が後ろに来ています。「人々が○○をする。」というのは、イメージしやすい文で。内容は具体的ですが、「需要と供給」「前提」などは、より抽象度の高い言葉だからです。●ページの言葉の例では、「犬」よりも「動物」というのが、抽象度が高い言葉でしたね。 このように、主文が後ろにくる場合は、次の段落がさらに具体的な例であることが目立ちます。   ルール3 例の主文は前後を探す
③   たとえば大昔、海岸に住む漁師と、山で猟師をしている人がいたと考えてみましょう。漁師は、毎日魚を獲って食べています。でも、たまには、魚以外のものも食べたくなるでしょう。山で獲れたイノシシの肉を食べたくなったとします。 ④   一方、山の猟師も、いつも動物の肉ばかりでは飽きてきます。魚も食べたくなるでしょう。こういうとき、互いに魚と肉を持ち寄って物々交換をすれば、互いにとって幸福です。漁師は漁の専門家、猟師は狩りの専門家です。漁師が魚もイノシシも獲るより、互いに自分の得意な分野の仕事をして、獲物を交換した方が、ずっと効率がよくなります。 ⑤   これが分業であり、交換です。私たちは、分業と交換をすることで、すべてを一人で担当するより、ずっと豊かになることができたのです。
  ③の冒頭に「たとえば」とある通り、この段落は具体例になっています。④の冒頭は「一方」という接続詞が形式段落の始めにあるので、前の段落と同等のことが書かれていることになります。③と同じ「例」であることがわかります。 ③には、主文がありません。それは、「例」がもっとも内容がくわしく具体的で、それ以上縮めることができないからです。しかし、「例」は必ず何かを「説明している文章」なので、その前後に主文があります。この場合だと、②の最後にある主文、「需要と供給」は、分業・交換を前提にしているのです。という部分と、④の最後の文章漁師が魚もイノシシも獲るより、互いに自分の得意な分野の仕事をして、獲物を交換した方が、ずっと効率がよくなります。です。それから、⑤の「これが分業であり、交換です。」の箇所も③と④をまとめているので、主文ということができます。しかし、②と重複するのでここでは省いています。 「例」の主文は、このように形式段落の前後の形式段落の直前・直後にある場合と、形式段落の中の最初か最後の文である2つのケースがあります。わかりやすく丁寧な文章では、このように前後二つの箇所に主文が書かれていることが多くなっています。 主文を探す候補としてはこのように四か所ありますが、そのうちの、どれか一か所には必ず主文があります。「例」は読みやすく長文になることも多いので、うっかり読み流してしまいがち。そのため、例が書かれていたら、「何の例なのか」といった問題意識を持ち、例が書かれている時は前後の文章をチェックする必要があります。その主文は抜き出し問題で頻出される箇所でもあるからです。   ルール4 つなぎの段落には主文が二つある
⑤  これが分業であり、交換です。私たちは、分業と交換をすることで、すべてを一人で担当するより、ずっと豊かになることができたのです。
  ⑤は、④と⑥をつなぐ段落になっています。この段落には2文しかありませんが、前の文が④の主文、後ろの文が⑥の主文になっています。一番はじめに主文があり、その文を説明しながら、途中から文章が展開。最後の文が次の段落の主文になるという場合もあります。こうした場合も主文が二つになります。形式段落が長い場合は、最後の文をよくチェックすることで二つ目の主文が見つけやすくなります。 ルール5 文末が強調されている文は主文と考える
⑥  あなたの日常生活のことを考えてみましょう。あなたが着ている服、はいている靴、食べている食べ物。これをみんな自分一人で作るとしたら、大変です。毎日毎日、食べ物を探し、調理し、服を修理し、ということをやっていたら、他のことは何もできなくなります。分業して出来たものを交換することで、私たちはゆとりある暮らしができているのです。 ⑦  分業や交換をする能力のない動物たちが、日々の食べ物を追い求めている様子を見れば、人間がなぜ豊かな生活ができるようになったかがわかります。
  ⑥は⑤の主文の例であり、⑥の後ろの文がまた主文になっています。⑤に主文があるので、⑥の主文は入れなくてもよさそうですが、これを主文だと考えている理由は二つあります。一つは⑦が「例」であり、この主文になっているためです。もう一つは、文末が「のです。」となっていて、単に言い切っている「です。」よりも表現として強調されています。筆者が強く伝えたい内容であるということです。 これは、いわゆる論説文に比べると、主張としては弱いものです。しかし、特に筆者の特筆する意見が書かれていない説明文であっても、筆者が読者に強く伝えたい内容として文章にトーンをつけている箇所です。ただ、この部分がなくても、文章の骨格としては成り立ちます。こうした特徴については、論説文を3-3で取り上げます。   ルール6 逆接でつながっている文は後ろが主文
⑧  交換することによって私たちは豊かになることができたのですが、大昔の物々交換は、実はとても大変なことだったのです。
  ⑧の文章は、「交換することによって私たちは豊かになることができた」と「大昔のぶつぶつ交換は、実はとても大変なことだった」という二つの文章がつながったもの。で⑦と⑨をつなぐ文だと考えることができます。このように、逆接の助詞「が」で文がつなげられているときは、後ろの文が筆者の強調したいこと。よって、後ろが主文になります。接続詞「しかし」「だが」などでつながっている場合も同じで、逆接の関係で書かれている場合は目印がはっきりしているので、主文を見つけるのが容易です。   ルール7 因果関係でつながっている文は後ろが主文  
⑨  魚を持っている漁師が、イノシシの肉を持っている猟師と、魚と肉を交換することを想像してみてください。魚を肉に交換したいと思っている漁師がいても、「肉を魚に交換したい」と思っている猟師に出会うことは、なかなかあることではありません。 ⑩  そもそも二人がバッタリ出会う偶然は考えられませんし、たまたま肉を持っている猟師と会えたとしても、猟師は肉を果物と交換したいと思っているかも知れないからです。 ⑪  そこで、物々交換したい人たちが広場に集まってくるようになります。これが市の始まりです。市にいけば、物々交換したいと思っている人たちに会えます。
  ⑨と⑩は、⑧の「物々交換は大変」という文を説明する例に。そして、⑧は⑪の「市の始まり」の原因になっています。二つの文は「物々交換は大変なので、市が始まった。」と、原因と結果を表わす文としてつなげることができます。これを「文章の因果関係」と言います。   原因 ⑧ 物々交換は大変 ↓  ⑨⑩ 例 結果 ⑪ 物々交換したい人たちが広場に集まる。(市の始まり) 文章の因果関係については、後ほど詳しく説明しますが、「結果」を「くわしく説明」しているのが「原因」だと考えることができます。そのため、「結果」の方を主文とするわけです。⑧は⑨と⑩の主文。かつ、⑪の主文に対しては従文であるという関係になります。   ルール8 因果関係が続くときは最後が主文 途中の文章を飛ばしてしまうと、原因と結果の連鎖が途切れてしまって意味がわからなくなる。この意味で各文章は主文です。一方で、この一連の文章は「金貨や銀貨などがお金として使われるようになった。」ことの理由を説明しています。つまり、現在のお金の原型ができるまでの歴史(時間経過)をたどることで、お金の意味を説明しているのです。余談ですが、お金は「金(きん)」という字を書きますよね。   ルール9 複数の段落をまとめているところは主文   次の⑳㉑は、段落の全体が主文になっています。
⑳ 他人が欲しがるものを製造したり、獲ってきたりすることで、金貨や銀貨に替える。すると、その金貨や銀貨を使って、自分が欲しいものと交換できる。 ㉑ お金が生まれたことで、私たちは分業ができるようになり、欲しいものと交換することで、豊かな暮らしを実現するようになったのです。同時に、「需要と供給」の関係が成立しました。  
  ㉑は③から始まった分業(他人が欲しがるものを製造したり、獲ってきたりすること)と交換、お金の説明をまとめ、㉒は「分業と交換」と豊かさとの関係、①②も含めた「需要と供給」の成り立ちまでをまとめています。文全体を一段上からまとめている主文だと言えます。 以下、㉒~㉖は銀行の成り立ちを因果関係で説明している部分です。「需要と供給」というツリー構造の説明。このほかに、現代の市場経済の成り立ちを因果関係で説明している部分があって、縦軸と横軸で文章が構成されています。 「文章の綾(あや)」という慣用句があります。文章が言わんとすることは、まさに綾織物のように縦糸と横糸が交差するところに浮き出してくるものなのです。文章をセンスで読む人は芸術家、分析的に読む人は理論家。大学での専門書を読み解く力は理論家の力なので、こうした文の構造に沿った読み方を基本として知っておくことが大切なのです。   自由が丘の塾 直井メソッド国語専門塾]]>

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