文章の骨格とは「書き手の意志」に他ならない

一九六九年に初めて人間を月に送ることに成功したアポロ計画は、意外なプレゼントを人類にもたらした。それは、宇宙に浮かぶ青い地球の写真だった。それまで私たちは実際に宇宙に浮かぶ地球の姿を見たことはなかった。この写真によって初めて、私たちは「地球は一つ」であることを実感し、地球環境問題に積極的に取り組むようになったのだ。 アポロ計画と同じことは、ほかの宇宙開発計画にもいえる。いったい宇宙はどうなっているのか、太陽系の惑星はどんな素顔をもっているのか、未知の世界を知りたいという好奇心は、ボイジャーをはじめ多くの宇宙探査機を送り出した。その結果得られた知識は、私たち自身が住む地球の誕生のなぞを解き明かすために重要なヒントを与えてくれたのだ。「宇宙に出ることが、逆に地球を知ることになる……。」宇宙を目指す大きな理由の一つがそこにあるのだ。 そしてもう一つの理由は、私たち人類の未来と関係がある。かつて、SF作家アイザック・アシモフは、人間があふれ自然が破壊しつくされた地球と、その地球を離れてほかの惑星に移り住む未来の人類の姿を描いた。確かに現在のペースで人口が増え続けると、二十一世紀には、地球の人口が一〇〇億人を超えると推定されている。現在のところ、一〇〇億の人間を養う資源も食料も確保できる見込みはない。また、今以上に地球環境は深刻なものになるであろう。SFが描いてきたような未来が、そう遠くない時期にやってくるのだ。 いま、二〇三〇年ごろまでに火星に人間を送ろうという壮大な計画が進められている。月から見た地球が私たちに衝撃を与えたように、二十一世紀に初めて人類が火星に降り立つ時にも、私たちが予想もしない大きな発見がもたらされるにちがいない。人類は、自分たちの未来を切り開くために宇宙を目指しているといえるかもしれない。 761字  毛利(もうり)衛(まもる)『宇宙で学ぶ理科実験』《宇宙開発事業団》より   文章には骨格があるとしたら、その骨格はどのように見分ければいいのでしょうか。

縮約率3分の1の縮約例 アポロ計画がもたらした宇宙に浮かぶ青い地球の写真よって初めて、私たちは「地球は一つ」であることを実感し、地球環境問題に積極的に取り組むようになった。宇宙を目指す大きな理由の一つが、宇宙に出ることで、逆に地球を知ることにある。そしてもう一つの理由は、人間があふれ自然が破壊しつくされた地球と、その地球を離れてほかの惑星に移り住む未来の人類の姿を描いたSFのような未来が、そう遠くない時期にやってくることだ。人類は、自分たちの未来を切り開くために宇宙を目指しているといえるかもしれない。  241字 縮約率32%  
縮約率5分の1の縮約例 宇宙開発計画によって、宇宙を目指す大きな理由の一つは、宇宙に出ることで、逆に地球を知ることにあり、もう一つの理由は、人間があふれ自然が破壊しつくされた地球と、その地球を離れてほかの惑星に移り住む時期がやってくることだ。人類は、自分たちの未来を切り開くために宇宙を目指している。 140字 縮約率18%
  例をよく読んでみると、縮めてあるにも関わらず、原文の内容が変わらないまま、自然な文章として成り立っていることに気が付きます。特に3分の1の縮約率だと原文の変形があまり行われていないのに、それ自体で文章としての意味が通じることがわかります。これは、ある決まりによって、文章の骨格部分だけを、選んでいるからです。文章はこうした骨格があることで、文が長くなっても筆者の意図が伝わるようになっています。 5分の1の例はよく、要約と言われるものに近くなっています。要約を出題者の意図に沿って行う場合も、文章の骨格部分を理解していることが前提になるのです。国語のできる子は、この「骨格部分」をしっかりつかんでいます。 自由が丘の塾 直井メソッド国語専門塾]]>

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