こんにちは。作文・読解プロコーチの直井明子です。
読解講座の生徒さんには、帰国子女が多いです。
ブラジル、イギリス、スペインなどに、
0~7歳までの期間に滞在していたという生徒さんです。
通常の日本語のコミュニケーションには、まったく支障はみられないのですが、
物語文にくらべて、説明文の読解が極端に苦手
というのが、共通した悩みです。
8歳までが母語(※思考力をつかさどるベースになる言語)の形成期と言われていますが、
みなさん、ほぼその期間を海外で過ごしていたところが、共通です。
日常会話は家庭内で行われていますが、
オフィシャルな言葉が、日本語としてほとんど入ってこない環境だったのでしょう。
日本に住んでいれば、いやでもテレビや大人同士の会話などで、
理屈っぽい日本語が飛び込んできます。
子どものときには、NHKのニュースの意味がよくわからなくても、
なんとなく聞いていた、というような体験です。
この子たちの音読をチェックしていると、
基本的な言い回しの語彙がぬけていることがあります。
「五六人」というのを、五十六人としか読めなかったり、
「死にたえた」というのを、「死にた」「えた」という区切りで読んだりします。
それは、本人たちの責任では決してないのですが、
あまりにも基本的な語彙力がないために、
まわりの大人にもその問題点が理解しがたいのです。
論理的な文章の読解スピードが遅い理由は、
基本になる母語が、そうした論理的な分野に限って欠落しているためではないか
ということが予測されます。
日本語は、子音を中心とする海外の言葉とは、大きく性格が異なるので、
海外で過ごす子どもたちは、
母語形成が不完全になるという大きなリスクを背負ってしまいます。
これは、日本人が新たに直面した問題なので、あまり知られていないのですが、
日本独特の問題でもあり、海外赴任者には、独自の対策が必要です。
母語のリカバリーは、本来は、中学受験どころの問題ではなく、
それだけでも本格的に取り組む必要があります。
しかし、問題が問題として認知されていないので、
それが表面化するのが説明文が苦手という現象によってなのです。
ここを理解していただける保護者の方には、
独自に考えた対策を実行していただいていますが、
本来は、オフィシャルな機関で、対策を考えていただきたいものです。
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