速読の問題点(母語の形成から)

英語教育が、母語の形成に悪影響を及ぼす恐れがある

という黒川伊保子さんの話を紹介しましたが、

もう一つ気になるのが、速読をやっているケースです。

速読というのは、写真記憶のようなイメージ力を使うので

イメージ力が強い幼児~小学生にとっては、学習力が高いのは確かです。

しかし、母語の形成の臨界期が8歳だとすると、

豊かな母語が築かれる前に

速読をやると、

英語学習と同じ理屈で

母語の形成に悪影響が起きるのではないでしょうか。

幼児教室の方針で速読をやっている生徒さんが、

作文を書けなくなり、事情を聞くと、

音読を嫌がるのだそうです。

読み聞かせに切り替えてくださいとお願いしたら、

やっと、普通の速度で文章を味わうことができるようになったそうです。

速読をするとデータとして知識を頭に残せるタイプの人もいて、

その魅力はとても大きいのですが、

速読で本を読むというのは、

いわば映画を早送りで見るようなものです。

速読のスピードで読んでいると、

言葉を記号として処理する能力はあがります。

映画のシーンは記憶に残るし、ストーリーもわかるでしょう。

しかし、思考力も未発達、情感も未発達というのが、

その年代の特徴なので、

全部の読書を速度に変えてしまうと

本来文章を読むときに形成される

母語に対する重厚な感覚や、思考力が

形成されなくなっていたのではないか

と思われます。

だから、作文を書くということに対しても

やる気がないというより、情感そのものがわいてこないので、

英語の学習で言葉を失くしてしまった子のように

「不可能になっていた」のではないでしょうか。

つまり、普段の生活で感じていることを

うまく言葉に置き換えられなくなっていたのでは

と考えられるのです。

右脳学習にも本当に役立つものもありますが、

幼児教室の取り組みの中には、

きちんとした心理学的・教育学的な裏づけがないものもあります。

しかし、核家族で保護者の方が、会社勤めをしているようなケースでは、

小さいお子さんの普通の発育過程や育児法がわからないので、

エスカレートしてしまいがちです。

こと言葉に対するものについては

英語ができるようになりそうだから、記憶が良くなりそうだから、

と、やりすぎるのではなく、

伝統的な教育方法や発達段階のことを踏まえて、

慎重に取り組むべきです。えっ

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