平安貴族の精神世界

こんにちは。直井メソッド国語教室の直井明子です。

古文を読んでいると、平安貴族の行う様々な宗教儀式が出て来ますが、その活動の意味を正確に知ることは難しいのではないでしょうか。

一つの原因は、貴族たちの精神性がとても高いということです。例えば、方違え(かたたがえ)といって、悪い方位をさけるためにわざわざ泊りがけで迂回する習慣がありましたが、下手をすると迷信深いというように、捉えることもできてしまいます。これほど迷信深いのは、合理的な知性がなく、精神的に弱いのだという風に、誤解すらされてしまう可能性があります。しかし、高度な芸術を愛好するような繊細な感覚の持ち主は、地球のエネルギーの変化のような気の変化に対しても、影響を受けてしまうのです。こうした事情が少しわかれば、方違えは、地球のエネルギーを自分のエネルギーとして利用する文化だと理解することもできます。

二つ目の原因は、時の権力は、対抗する恐れのある宗教を弾圧するのが常で、そこでその宗教に対する理解も途絶えているということです。明治政府は、方違えを行う陰陽道を迷信だといって、廃止しました。神仏分離・廃仏毀釈もありました。戦前には、敗戦を予言した新興宗教の大本教に対する弾圧が行われましたが、その時の信徒数は700万人という大教団でした。戦後になってもこのことは、教科書にも載っていないので、実質的には埋もれた歴史となっています。戦後のアメリカ占領下で弾圧されたのは、神社神道で、たくさんの神社がさびれてしまいました。こうした歴史的背景があると、その宗教がタブー視されて、その実態を正確に知ることが難しくなるのです。

平安貴族の話に戻ると、陰陽道が迷信だとされた時から、方違えの理解は歴史的に埋もれていると言えます。方違えだけでなく、出家が普通に行われていて、早く仏道に入りたいというメンタリティーは、理解に苦しむのではないでしょうか。

しかし、平安時代は350年もの間、戦争が起きず、絶大な統治力が発揮されていたと言うことができます。芸術と宗教を愛し、政権を握っていた貴族たちのメンタリティーが、弱々しいものだと考えることは、史実に反するのです。素直な仮説を立てるとすれば、貴族たちは方違えによって、大地のエネルギーと運をものとし、陰陽師や占いによって予見力を得、仏道に入った人々の祈りの力で、時の政府への神仏の加護を得ていたということです。

古文の世界に触れるということは、日本の伝統の持つ英知を知ることにつながります。近代化以前の話ばかりですが、その世界に敬意を持つことは、文化の核心へと迫り、得るものの多い学習方法になっていきます。

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